開局日時変更のお知らせ

誠に勝手ながら、都合により

2月3日(金)・22日(水)

休業させていただきます

また 17日午前中は休業13時からの営業にさせていただきます

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします

なお、19日(日)アリスマーナでハーブレッスンを開催予定です

喫漢方薬去<KKPK>~漢方薬をご一服

葛 根 湯(かっこんとう)をご存じですか

漢方薬の中で、なじみがあると言われるひとつに葛根湯があります

風邪の引き始めに飲まれた経験がある方がほとんどだと思いますが、その他にも幅広く使われます

またエキス細粒剤で飲む機会が多いため、何種類の生薬が入っているのか医療関係者でも知らないことがあります

今回は葛根湯についてお話したいと存じます

葛根湯という処方(レシピ)は七つの生薬を使います

生薬文字 葛根湯
葛根湯 生薬文字

   葛根湯の生薬で文字を作ってみました。「根」の字が失敗(;^_^A

   葛根(かっこん)  :マメ科のクズの根

          麻黄(まおう)   :マオウ科のマオウの地上部

   桂枝(けいし)   :クスノキ科の植物の皮

   芍薬(しゃくやく) :キンポウゲ科のシャクヤクの根

   甘草(かんぞう)  :マメ科のカンゾウの根

   大棗(たいそう)  :クロウメモドキ科のナツメの果実

   生姜(しょうきょう):ショウガ科のショウガの根茎(できれば生が良い)

若草色の文字の桂枝・芍薬・甘草・大棗・生姜桂枝湯(けいしとう)という「漢方薬の祖」と言われる処方を構成しています

つまり、葛根湯桂枝湯に葛根と麻黄を加えた処方となっております

 

葛根湯はどんな症状に効くのか

漢方最古の古典である『傷寒雑病論』(しょうかんざつびょうろん)の葛根湯の処方の冒頭には以下のように記されています

太陽病項背強几几無汗悪風葛根湯主之

(太陽病、項背強ること几几、汗無く悪風するもの、葛根湯之を主る)

「傷寒雑病論」には他にも葛根湯に関する条文がいくつかあります

その「傷寒雑病論」に出てくる薬方の条文をまとめ、方意を示した「類聚方」(吉益東洞 著)の「方極」には以下のように記されています

治項背強急発熱悪風或喘或身疼痛者

(項背強急し、発熱悪風し、或は喘し、或は身疼痛する者を治す

これらより、首から背中にかけてのコリがあり、皮膚が湿っぽくないこと(汗をかいてない)を目標に風邪の初めに使われます

また風邪で下痢をするもの(腹痛がほとんどない)にも用います

慢性的で首から上に症状があるものには、この薬方やこれにいくつか生薬を加味しても用います

 

漢方エキス製剤の添付文書の効能・効果には以下のように記されています

頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項、肩、背などがこるもの、あるいは下痢するもの。

感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛。

コタロー漢方製剤の添付文書より引用

葛根湯=風邪薬のイメージが強いのですが、薬方の方意をくみとることにより、風邪などの急性の症状だけでなく、肩こり、神経痛などのやや慢性の症状にも用いることができます

ご相談をいただいた症例の中に、頭部の帯状疱疹(初期)、顔面神経痛、三叉神経痛などに葛根湯または葛根湯にいくつかの生薬を加味した処方(葛根湯加辛夷川芎、葛根湯加桔梗石膏など)を用いたことがあります(いずれも病院を受診した後のご相談です)

 

「葛根湯医者」は迷医?or名医?

古典落語に「葛根湯医者」という小噺があります

葛根湯医者というのがございまして、こいつは無闇に、葛根湯ばかり飲ませたがる。

「お前さんはどこが悪いんだ?」
「先生、どうも、頭が痛くてしょうがねぇんですがねぇ。」
「んー、頭痛だなぁ、そりゃ。葛根湯、やるから、飲んでごらんよ。」
「お前さんは?」
「腹がしくしくいてえ(痛い)んです。」
「腹痛てえんでぇ、そりゃ。葛根湯やるから、お飲み。そっちのほうの方は?」
「どうも、足が痛くって、しょうがないんですがねぇ。」
「足痛てえんだよ、そりゃ。葛根湯やるから、一生懸命、お飲み。その後ろの人は?」
「先生、あっしは、目が悪くってねぇ。」
「ん、そりゃ、いけないなぁ。目は眼(まなこ)といってなぁ、一番、肝心なところだぞぉ。
葛根湯やるから、せいぜい、お飲み。その隣の方は?」
「いや、兄貴が目が悪いから、一緒に付いて来たんで。」
「そりゃ、ご苦労だなぁ。退屈だろう。葛根湯やるけど、飲むか?」

*『落語小噺の部屋』http://raku5kobanashi.seesaa.net/article/125157273.htmlより引用させていただきました。柳家小さん師匠バージョンです。

むやみに葛根湯しか出さない医者のむやみさの極みがオチなんでしょうね(笑)

よく見ると、頭痛、腹痛、足痛、目の症状に葛根湯を用いるのは、薬方の方意としては合っているとも言えます(実際はもっと詳しく症状を聴きます!)

そして最後の付き添いの方も、目の悪い兄貴を連れて歩いてきたら肩こりや筋肉痛にもなる可能性もあるので葛根湯を飲むのもアリですね

葛根湯の使い道を知り尽くしているということで、葛根湯医者は実は名医なのかもしれません